京鹿子娘道成寺

さて、お弾き初めも終わり、次にお稽古する曲の選定になりましたが・・・
その時の話とは一転、次の曲は京鹿子娘道成寺に決まりました。

さて、譜本を見ますと・・・・というか、有名な曲なので時々聞くのですが
後半にある長い合方、チンチリレンの合方として有名な
練習曲的な曲がある唄、としてばかり考えているので、
何の話なのか良く知りませんでした。

道成寺と言えば、やはり安珍清姫かと思うのですが
一向にそれらしい所の無い曲です。
ちなみに安珍清姫というのは
熊野詣でに来た、若いイケメンお坊さんの安珍に
宿の娘清姫が恋をするのですが
安珍は約束を破って熊野詣での帰りに宿に寄らなかったので
清姫が怒って安珍を追いかけ、蛇に姿を変え
ついに安珍が中に隠れた鐘に巻き付き
口から炎を吐き安珍を焼き殺す、というお話。

ちょっとしらべたところ、今回の娘道成寺はその後日談。
しかも踊りのための曲だそうです。

最初は
花のほかには松ばかり~
花のほかには松ばかり~
暮れそめて鐘や響くらん~
と能のような調子(謡いがかりと言います)でせりふが入ります。

松の緑と桜の花が咲いている光景でしょうか。
しかも暮れの鐘が響いているので春の夕方ですね。

と三味線が急にチテンストンツ~ンと早めに響き
気分が一転、ちょっと色っぽい調子になります。

すらりと唄えと注が入って
鐘に恨みは数々ござる。
初夜の鐘を撞くときは諸行無常と響くなり。
後夜の鐘を撞くときは是生滅法と響くなり。

鐘に恨み?安珍を隠した鐘を恨んでいるのね。
でも、数々あるということは?
この色っぽい調子は金の恨みにも聞こえますね。
下世話な気分が漂います。

最初は?初夜の鐘?何?調べるとこれは戌の刻(午後8時頃)の鐘らしい。
夜の初めってことね。
廓(さと)ではこの時刻は宴会が終わって客と遊女が床につく時間。
やっぱり初夜じゃん・・・・(^^;)
後夜の鐘は明け方4時過ぎに鳴る鐘、
そろそろお迎えが来てお客も帰る時間。別れの時間ですね。

諸行無常、何事も同じと言うことはない毎日
いろはにほへと・・・色は匂えど
是生滅法、これが生滅の規則です。
ちりぬるを・・・・きれいに咲いていた花もいつかは散ります。
何事も変化するのです。

お客と床に入り、色(色香)は匂えど・・・・
もう朝・・・・散りぬるを・・・・・
すごいじゃん!謎を解いた気分ですよ!

では次。
晨鐘(じんじょう)の響きは生滅、滅已(しょうめつ めつい)
入相(いりあい)は寂滅為楽(じゃくめつ いらく)と響くなり

晨鐘は朝8時頃に鳴る鐘、廓(さと)ではお針仕事などの開始時刻
入相は夜、日の入り頃、夜見世の始まりを知らせる鐘、つまり廓開始時刻ね。

生滅滅已は生滅(できたりこわれたり)と言うことにとらわれない、という意味
わかよたれそつねならむ・・・我が世誰そ常ならむ
寂滅為楽。寂滅(やすらぎ?)で楽しくなる
ういのおくやまけふこえてあさきゆめみしえひもせずん
有為の奥山今日超えて(何とかしなくちゃという心の山を乗り越えれば)
浅き夢見し酔いもせず、(苦しみや悩みは酔っぱらって見ていた夢のようだわね)

あぁ、また雑用の日が始まるわ、でも何事もこのままってことはないわ、
ほら華やかな夜見世のはじまりよ、(勝負勝負、お客商売)
でも深く考えなきゃ、これも夢の世界よね。

コレはお経ですね!いろは歌と諸行無常偈というお経ですよ。
廓では色々な鐘が仕事や生活を仕切っているので
その鐘が恨めしいのかしら?
いや、その鐘のもとでの生活が恨めしい?

とりあえず、この続きを・・・・・・
聞いて驚く人も無し、
我も五障(ごしょう)の雲晴れて真如(しんにょ)の月を眺めあかさん
と続いて一段落ですが・・・・
ここが一番わかりません・・・・
何を聞いて驚く人がいないのでしょうか?
このお経?それとも入相の鐘?

ところで、五障説とは女性は梵天王(ぼんてんのう)・帝釈天(たいしゃくてん)
・魔王(まおう)・転輪(てんりん)聖王(じょうおう)
・仏(ほとけ)の五つになれない、つまり出世できないというものです。

真如とは仏教用語で永久不変の真理の意味。
明月の光が闇を照らすように、真理が人の妄想や煩悩を解き、
心の本質を表すことですから、
五障などがあるこの世間から離れて、妄想や煩悩のない
清らかな心持ちになりたいと言うことでしょうか。
つまり、ここから逃げ出したい?

え?勘ぐりすぎですか?廓だなんてどこにも書いてありませんし
どの解説にも書いてありませんよ。
でも、この見事な一致は確かに廓と絡ませてあると思うんですよ。
してみると最初の、はなのほかには、まつばかりというのは、
華々しい時以外は待つ(松)だけ・・・・とも読めますね。

では、この続きはいづれまた・・・・・
[PR]
by yamamotoyk | 2011-02-04 23:28 | 三味線 | Comments(0)
<< 歳時記(旧暦1月3日) “名二環”夢ウォ~ク >>