時雨西行

今、三味線の稽古は 時雨西行 をやっている。
最初に先生があらすじを話してくださった。

西行が雨に降られて遊女の家で雨宿りをさせてもらったところ、
遊女が普賢菩薩になった・・・という話らしい。

なかなか物語的な唄ですね。
でも、なぜ普賢菩薩なのかしら?
遊女が変身するなら単に観音様じゃいけないのかしら。
観音様か弁天様の方が親しみやすいし。

さて、実際のお稽古に入っていきました。
西行法師が秋ひどい時雨にあって、雨宿りを頼むと主人らしい遊女がつれなく断る。
そこで、西行は  “世の中を厭うまでこそかたからめ
仮のやどりを惜しむ君かな”  とうたを詠むのだ。

意味を調べると、  「世を捨てるのはむつかしいことだけど、
宿を貸すことを惜しむのか。」  ということだそうだ。

世を捨てるのがむつかしいのと、宿を貸さないことになんの関係があるのか
どうもよくわからない。世を捨てるのはいったい誰だと言うのか?
この二週間ばかりずっと考えていたのだけれど、わからない。
そこで、ここに書いて考えてみることにした。

さて、それを聞いた遊女は、ねえねえちょっと、と呼び止め
“世を厭う人とし聞けば仮の宿に
心留むなと思うばかりに”   と返歌をする。

これはわかり易い。  「世を捨てて出家した人だと思ったから
仮の宿(現世)に執着してはいけないと思っただけですよ。」

ま、そんなことが厭じゃなかったら、(遊女として相手をしないということかな?)
どうぞお入りくださいな、と招き入れます。

で、遊女はお泊めするからにはどうして出家したのかと聞く。
西行は自慢げに(伴奏が勇ましい)身の上話をする。
鳥羽の御門の北面の武士だったが、
飛花落葉の世を観じ弓矢を捨てて墨染めの衣に仏法探求の道だという。

それを聞いた遊女は、あぁ、うらやましいこと。
私の身の上は父母も知らないし、流浪の身なんですよ。
春には花が咲き、秋には紅葉を見、月だ雪だと人が頻繁に訪れたが、
それもいつしか枯れて、心がないはずの草木にもあわれがあるのだから、
人にも無いはずはないのに。
ある時は色に染み、貪着(のんちゃく)の思い浅からず。
ある時は声を聞いて愛執(あいしゅう)の心が深い。
こういう思いこそが人生悩みの種なんですね。

そこまで聞くと西行は、これはただ者ではないぞ!と、驚く。

心を落ち着けて、目を閉じると
その遊女の姿が普賢菩薩に変わっている。
仏教の教えが姿を現している。
目を開くと遊女で、昔は花よ紅葉よ月雪だったけど、
今は人も来ず、良いこともなくて、世はつらい。
目を閉じれば、やはり六本牙の白い象に乗った普賢菩薩でめずらしい香りと音楽だ。
あぁ、ありがたや、と生身の普賢菩薩を拝みます。

ここで曲は江口の里で時雨にあって雨宿りをしたことを一節にしました、と終わります。

どうやら、遊女は変身した訳じゃなくて
西行が遊女の中に普賢菩薩を見たと言うことですね。

人生の無常を彼女の中に見て哀れに思い
しかも、彼女がもっとこのままいい思いをしていたいと思い(貪着のおもい)、
再びもう一度いい思いをしたいと執着(愛執)することが、
心の迷いの本質だと断じている。その思いに共感するとともに、
遊女が哀れにもなって、普賢菩薩が遊女を守ってくださるようにと念じたのかもしれない。
ちなみに普賢菩薩は女性の守り仏だそうだ。

元に戻り、もう一度、西行のうたを考えた。
世の中を厭うまでこそかたからめ
これはひょっとして西行が、出家はしたけれど、
現世の執着を捨てるのはむつかしいと自分で言っているのではないか。
なにも、雨を避けるのに頼んだ家の主人が遊女とわかった時点で、
やめればいいじゃないか。それでもあきらめきれない。
仮のやどりを惜しむ君かな
そんな自分をまるであなたは見透かすように、宿を拒むのか。

遊女の方はというと、もはや若くなく、(どうも40過ぎらしい)
最近お客が来ないと嘆いている時に、
人が来たのはいいが、お坊さんだ(ここで少しがっかり)。
そして出家した人が遊女の所に来るなんて、とむっとする。
(彼女はもとは平家のお姫様らしい。)
こんな所に用はないはずでしょ、とことわると、お坊さんはうたを詠む。
仮の宿りを惜しむ君?わたしが現世に執着しているって言うの、あなたは。
たしかに、それが今の私の心境なんだけど・・・
だったらなおのこと、あなたこそ仮の宿に執着するなって、お返歌しますよ。
商売にはならないようだけど、自分の意見は言ったし、それでもいいならと招き入れる。

身の上話になって、つい、自分の今の心境を語ると、
おや、このお坊さん、感動している。なかなか心ある人のようだ。
(話がきっと盛り上がったことでしょう)
後になって、この遊女は、仏門に帰依し、寂光寺という尼寺を建ててもらったらしい。

あぁ、自分勝手な解釈をして、やっとすっきりしました。
ここまで読んでくださった方ありがとうございました。
これはあくまで、うまこ的解釈なので、その辺りどうぞよろしく。
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by yamamotoyk | 2005-07-04 14:17 | 三味線 | Comments(0)
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