さて、前回上村松園について書いたところ、
松園作の下絵と完成作品を見ると、完成作品は突き抜けた穏やかさがある、 というご意見がありました。 私は、下絵の方が完成品より迫力があるのは、 下絵の迫力を完成作品にうまく写せなかったからだと思ったのですが、 ひょっとしたら、意図的にこのように描いたのではないかと思えるようになりました。 明治時代女性が絵を描いて世に出るためには 並大抵のことではなかったはずです。 才能のある女性はひょっとすると常人以上に大変だったかもしれません。 世に認められるためには迫力だけではない何かが必要だったはずです。 松園は下絵をとても大切に保管していたということなので、 自分の描きたい物と描くべきものを区別していたのかもしれませんね。 でも、ぜ~んぜん違うわよ、よけいなお世話よ、と松園さんに嫌われそうです。 こんな風に色々考え出すと絵が楽しめなくなったりするので、 あんまりぐちゃぐちゃ考えないようにしようと思うのだけど・・・・・ さて、美術館めいているところで、もう一箇所。 松坂屋本店の松坂屋美術館の7月1日~7月17日に開催されている 古九谷浪漫 華麗なる吉田屋展 です。 私は、母が結婚前の一時期、金沢に住んでいたことがあったり、 北陸地方に親戚がいたりするので、 九谷焼とか輪島塗とか聞くと何となく懐かしい気がします。 このパンフレットをあるお店の店頭で見て、 きれいな色に惹かれるとともに、これは是非行かねば、と思ったのです。 さて、行ってわかったことですが、 九谷焼は実は加賀のお殿様が鍋島のお殿様と親戚関係で かつ江戸城における部屋割りの関係で 鍋島の焼き物師を加賀の土地に呼んで焼き始めたのが始まりとか・・・ 120年間廃れていた、その古九谷を何とかして復活させようとした 72歳の豪商、吉田屋の4代目伝右衛門翁が、 密かに古九谷の色を研究していた釉薬調合の職人、粟生屋源右衛門、 以下多くの職人を雇い、(源右衛門が破格の給料だったそうですが) 古九谷の聖地である九谷村の九谷古窯跡に窯を開き始めたのだそうです。 上絵師、鍋屋丈助の腕前も秀逸でもあり とにかく当時の金持ちに売れに売れ、大成功。 しかし、4年目に伝右衛門翁が亡くなってしまったので、 吉田屋の窯は7年間しか続かなかったそうです。 しかし、吉田屋の大成功のおかげでその後九谷焼の技術が継承され、 今に至っているということだそうです。 黄、緑、紫茶、紺青の4色で焼き物をこれでもかというほど飾った器は 好き嫌いはあるでしょうけれど、 おそらくは一商人の趣味と情熱から始まったものだけに 全てに一級を求め、それに応えた職人さん達の仕事ぶり。 ある制約(例えば色、例えば用途)の中の自由さ、生活の器に込められた芸術。 つくづく御祖先様のすばらしい技術と感性に誇りを感じたひとときでした。
by yamamotoyk
| 2006-07-09 15:15
| 外出
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Comments(6)
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ぶり
at 2006-07-09 18:17
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描きたい絵と売れる絵は違うことを承知していたのではないでしょうか。
松園の随筆には、明記しているわけではありませんが、 そうだったかもしれないと推測できる箇所があります。 生存中から売れる絵を描けた人は、描きたい絵と区分していたのでは なかろうかと、一つの仮説をたてています。
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yamamotoyk at 2006-07-09 20:04
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ぶり
at 2006-07-09 20:58
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趣味で、仮説をたてているので、証明などは、美術評論家にお任せしようかと。
これじゃー、やりっぱなしだぁ?! 無責任かな~ うふ♪
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yamamotoyk at 2006-07-10 11:32
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百福
at 2006-07-11 15:01
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吉田屋が揃うって、行けるものなら行きたいですね。ご愛顧くださりありがとうござりまする。九谷は故郷のものでありますので、子供のころから、周りにはやきものに従事している人がいました。九谷の若い陶工たちは、いろんなおもしろいものをつくっています。並べるとうるさいけど、食卓のどこかにひとつあると、引き締まりますよね。
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yamamotoyk at 2006-07-11 20:10
はい、百福さん、相当な数の出展で非常に見応えがありました。と~っても満足しました。
吉田屋の食器をメインにして、雰囲気の合う物を取り合わせた現代風テーブルセッティングがあったり、展示方法も色々工夫されていて楽しめました。九谷の濃い色はある種の魔力がありますね。
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