深読み・吾妻八景Ⅲ

さて、
長い間奏が終わると、すぐに次のシーンの前奏に続きます。
次のシーンは真ん中の弦の(二の糸)の調子をミから#ファに上げます。
ゆとりを持ってあげられるように、#ファの音が何度も出てきます。
とても親切な作曲です。
はじめは二上がりの特徴のちょっと明るい感じで始まりますが、
唄が始まる直前で少し切ない曲調になります。

『はぁる~か、あなぁたぁのぉぉ~、ほとぉとぎぃぃすっ』
遙か彼方のホトトギス、を感じさせるように歌うとよいのですが、
これは、あなたが遠くて手が届かないという感じに聞こえますね。
切ないメロディーがますますそんな感じを強くします。

『はつねかけぇたかぁ、はごろもの、まぁつぅ~うわ、
てんにょ~ぉぉの、たわむれをぉ、みほにたとえ~て~、
するぅがぁのぉなある、だいのよせいぃの、いやたかぁく~、
みおろす、きしのいかだもり』
とどんどんつながっていきます。

ホトトギスの初音かけた
というのはホトトギスの初鳴きを聞いたということでしょうけれど、
わざわざ聞いたでなくかけたということは、
ついに声をかけたんですね、きっと・・・彼女に・・・・

で、かけたのは次の天女の羽衣を松に掛けるに
掛詞でもあるんですが、
『天女の戯れ』で、彼女にていよくあしらわれたと想像します。

天女が松に羽衣を掛ける羽衣伝説は
駿河の国の三保の松原の話なので
ここで駿河台を持ち出す口実になっています。

『駿河の名ある台の余勢のいや高く』
台の余勢が高いって?わかりませんが
駿河の台が高いことを言いたいだけなのか、
余勢がいや高くて、見下ろす岸の筏守。
で、注釈によるとその岸はお茶の水だそうですが、
駿河の台の下がお茶の水なんですか?
地図ではちょっと無理があるようなんですが、
彼女の威勢がよくて自分が見下されちゃってつらいんじゃないの?

ここからちょっとゆっくりした調子に変わり、
『ひをせおぉうぅ~た~る、あみだぁがさ、
のりぃのかたえぇぇ~のみやとがわ、
ながぁれぇ~(とちょっとくにゃっと流れるような雰囲気の音)
わたりにいろいろ~の』

筏守の阿弥陀傘の後ろから光が差す様子ですが、
とても神々しい調子で次の『法(のり)のかたへ』
と続きます。
彼女が神々しく輝いて見えるの?
でも本当の意味は不明ですが、
注釈では法は仏法のことで東本願寺のことを表しているのだそうです。
なぜならかたへの(そばの)宮戸川は隅田川の別名で
そばに宮戸川があるお寺だからでしょうか。
それにしてもすぐ次の『流れ渡りに色々の』って・・・なんでしょう。
私は彼女に渡りをつけるために色々工夫している主人公が目に浮かびます。

『はなぁの~にしきぃの、あさくさや、
みてらをよそに、うかぁれぇをぉぉは、
いづちへそれし、やだぁいじぃん』

花の錦の浅草や、浅草はやはりこの時代でも華やかなんですね。
御寺をよそに、浮かれ男は、って自分のこと?
嬉しくて浮かれているというより
心ここにあらずふわふわ浮いているような悲しげな音使いです。
いづちへそれし、はどこへそれたか、
矢大神というのは神社の左右の門(随身門)の安置される
武装した神様のことだそうですが
や、がそれしや(それたか)のやにつながって
だいじんが大尽(吉原で遊興する金持ち)にかけているのだそうです。
言葉遊びですね。
でも、(心の)矢がそれる切ない感じに聞こえます。

『もんんぴにぃあたるぅ、つじぃうぅらぁの』
この当たるが矢が当たると続くのだそうですが、
むしろ辻占いが当たる方がいいですね。
矢はすでにそれてるんだから。
紋日(もんぴ)は節句などのものの日と注釈がありますが
縁日のような感じでしょうか。

『ま~つぅば、か~んんざ~し、ふたすぢぃの。
みちのいしぶみぃい、つゆぅふみぃわけて、
ふくむやだての、すみぃぃ~、いぃ~ぃぃ、い、い、いぃだぁ~ぁぁぁがわ~』
ついにでました!かんざしです。プレゼントするつもり?
でも、んんの所がとても切なくて不安な音使いがされています。
だって、松葉かんざしは松葉のように先が二本に分かれているので
すれ違い、平行線の気分なんでしょう。
二筋の道の碑をたどり、露を踏み分けて・・・・行くの?
とは書いてなくて含む矢立の墨・・・
なるほど手紙を書くことにしたんですね。
矢立は携帯用の筆入れで、すみ~をず~っと引っ張って歌いますが
これはうまく筆が進まないんでしょうか・・・・墨をするだけ・・・・かも
とそのまま、すみは隅田川につながってしまいます。

ほとんどなぞなぞとだじゃれと連想ゲームのような文句ですが
男性の渋い声でゆ~ったりと歌われると
本当にしみじみと切ない気持ちが伝わってくる部分です。
歌詞のメロディーと三味線のメロディーが微妙に絡んで
実際の歌詞以上にせつない気分を盛り上げています。

長々とおつきあいありがとうございます。
では、また続きで・・・・
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by yamamotoyk | 2008-03-29 00:14 | 三味線 | Comments(2)
Commented by ぶり at 2008-03-29 18:24 x
先日来、ずーっとふむふむなるほどと、駄洒落・謎解きに頷きながら読んでました♪
「台の余勢のいや高く」→代の余情のいや高く→後代までも思いが続く?(^^;
駿河台の下は、御茶ノ水の岸って、合ってます。 というのも、駿河台の一方の下は、神田神保町の古本屋街ですが、反対側は、丁度、外堀で、湯島聖堂、東京医科歯科大から降りていくと神田明神。 その外堀北側の際に、地下鉄丸の内線の御茶ノ水駅があり、地下鉄といいながら、外の景色外堀の桜などを眺められる所。 JR御茶ノ水駅は、それより高い位置で、外堀の内側(南側)に位置しています。(詳しくは、google地図などを参照して下さいませ。)
Commented by yamamotoyk at 2008-03-29 23:28
はい、ぶりさんありがとうございます。
駿河台とお茶の水の関係もいいんですね。
知らない土地のことを調べるのは、なかなか難しいです。
同じく昔の言葉遣いもわからないことが多いですね。
勝手に解釈していますが、作者さん笑っているかも・・・・
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